vol.4

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


最初は、引き続き発声練習。
前回までのカオスな状態からはだいぶマシになって、課題にフォーカスできるようになってきた感じだ。
その課題の、母音での発声はまだ「低音でポジションをキープする」ということができない。高音領域ではある程度できていると言って貰えたが、身についているわけではなくまだ再現性がない。

高音は、先生が面白がってCまで弾いてくれたが全然届かない。
「大丈夫、遊んだだけだから」
と笑われたけど、全体に良く我慢できるようになったと誉めてもくれた。
最初と比べれば、わりと高音はあっさり伸びるものという印象はある。

低音はやはり難しい。出し方はだんだんイメージはできるようになってきた、実行はできない。

後半は、コンコーネ。
ピアノの「バイエル」みたいに、声楽の定番練習本みたいなものなのだろうか。
コンコーネをやる意義として

「正しいピッチで歌う」
「きれいなラインどりを学ぶ」
「歌詞がなくても音楽として成立させる」

ということを特に強調された。
また、私は発声を学んでいる段階だから強弱はつけなくてよい、ずっとmfで歌うように、と。

手始めに#2から・・・#1は「音域が低い」という理由でスキップされた。
最初に「ドレミ」で歌い、次に歌詞をつけて歌う(歌詞はついてないので「ラララ」で歌う)というのは、合唱団での練習と同じ手順だけど、

「固定ドでも移動ドでもいいけど、どうしますか?」

と聞かれたのには、心底驚いた。
先生、移動ドのアンチ発言が多いので、当然固定ドを強要されると思っていた。
私は移動ドでしか音がとれないから、この時は移動ドを選択したけど・・・

#2は、さらっと流しただけで終了した。
最初の方はウォーミングアップ的なものなので、あまり深入りせずどんどん進む、ということらしい。
というわけで、次回は#3。

vol.3

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


この日も発声練習に特化したレッスンだった。
前回に引き続き、非常に細かく止められては、とにかく響きをキープせよ、ということを言われた。

この時点での課題は、母音だけで歌った場合に音程によって発声が全然変わってしまうことで、さんざん直されながら繰り返した挙げ句
「ダメだ、まだ無理だな」
と言われてしまった。
先月から頑張って練習してきただけにガッカリだが、単に数をこなせばできるようになるわけではなく、どうしても質的な変化が必要なのだ。

自分の記憶の中でも、この時期は師匠の言われる「下顎」への意識がおかしかったと思う。しかし録音を聞き直してみると、当時の自分の「どうすればいいのかわからない」苦悩がありありと伝わってくるというか思い出されるというか…。

ふと、オクターブのポルタメントの練習中。
師匠の見解として
いま低音はギリギリCisまでは歌える、それより下は声帯のサイズの制限で、出るようになるかどうわからないが、Cが「漂う」くらいになればよい。

「そんな低音は出せなくていいです、私はdiv.で自分のパートがちゃんと歌えればいいので。Cとかはほぼバスとユニゾンだから私は歌わなくていいです…」

今まで伝えるチャンスのなかった自分の目的を言ってみたものの、冗談と思われたらしく、笑いながら

「声楽としてはそれでは困るよ」

あっさり却下。
え、でも出るようになるか分からないんですよね💦

…まぁ本来が声楽教室、合唱のdiv.だけを教えるとかはないやな😅

この回から、低音側よりも高音側のアタックが厳しくなっていて
「最初は低音から作っていこうと思ってたんだけど、声を聞いてみて、上の音域から安定させていくことに方針を変更した」
こんな話も出てきた。
これを書いている時点(=半年後)で振り返ると、その変更は幸運だったと思う。低音からだと永遠に先に進まなかった気がする。

vol.2

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


2回目のレッスンも、発声練習のみ。
この記事を書くために、この日の練習の録音を聞きなおしていると、いろいろひどすぎて居たたまれない。今の発声も半年後にはそう感じるだろうか。とくに低音の発声が全く野生のままで不安定だな。

高音は
「男性と同じように、Bくらいまで(地声で)引っ張れるようになればいい」
と言われているな。この時点ではAsが限界と認定されていた。

実にカオスな声だったので、ダメ出しのオンパレードだが、特に意識すべき基本として

「1音ごとにいい声を出そうとせず、全音域で音色を統一しろ」
「鳴らす、響かせることだけ考えろ」

そういう万人への注意事項とは別に、私はどのフレーズもおそるおそる歌いだしては、そのたびに
「出だしの積極性が足りない」
と怒られていた。5回目くらいに
私 「最初の音に自信がないのです」
先生「合唱じゃないんだから、間違ったらやり直せばいい。度胸が足りない」
これ以降は開き直って、同じことは言われなくなった。

練習の最後に
「あといくつかのパッセージを終えたら、練習曲をやるよ」
と当然のことを言われて、私は動揺した。発声のことしか考えてなかったのだった。

vol.1

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


受講を申し込んだとき、私は明確に、
「特に必要な音域での声量の改善のために、合唱での発声方法を学びたい」
と、実はあまり明確でない目的を、先生に伝えていた。

その時点で、私は自分を「男声」と規定してはいなかった。
合唱団に3年、テナーとして在籍して、私は自分の声がその音域をほとんどカバーしていないことを知っていたから、アルトの練習をしたほうがいいのではないか、それも相談しようと思っていた。「必要な音域」とは、それによって決まるのだ。

が、先生の方では
「テノールの低い音域が出せるようになりたい」
ものと思われたらしく、練習は最初から「テノール」前提で始まり、相談の機会は永遠に(?)失われたのだった。
まぁ、プロのテノールが許すんだから、いいんだろう。

先生によれば、女性テノールは近年「てのーら」と言う。「ガールテノール」より厚かましくはないが、相手に伝わらない確率が高そうだ。

最初に簡単なレクチャーで

・低音は生まれつきの才能であり、声帯の長さで下限が決まっている
・でも、いま50%くらいしか出せていないものを、訓練で70%とかに上げることはできるだろう
・地声の高音は、年齢と共に出せなくなる

それから、声域確認の発声練習(だと思う。このときと同じフレーズは、今後の練習で2度と使われることはなかった)
その後普通の発声練習で、45分はあっというまに終わった。
この日は、低音を中心に練習したので、低いC以下の音まで「粘れ」と言われた。
ただ、次のレッスンからは低音を後回しにすることになったため、そんな低音は、現在(=練習開始から7ヶ月後)に至るまで歌っていない。

vol.0

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事は当然それ以降に書いたものです。)


私の人生は、音楽とはおよそ縁のないものだったと思う。

子供のころに楽器を習っていた、などということもなく
(児童合唱団を半年で辞めたことはあった、そういえば。ちなみに最初からアルト)

音楽系の部活動に所属していた、ということもなく
(本来の水泳部の休眠期に小学校を転校した結果、1学期だけ吹奏楽部に入れられたことはあった、そういえば。ちなみにトロンボーン、鳴らせないままだった)

もちろん高校での芸術科目は、音楽選択ではなかった。

上のカッコ書き部分を思い出してみると、音楽を嫌いになるきっかけの方が多かったな。

それでも後に合唱を始めることにつながったのは、高校の合唱祭で、これは必ずアカペラという伝統だった。
私のアカペラへのこだわりは、青春へのノスタルジーかもしれない。
とりわけ3年次の卒業記念有志合唱への参加が、夏の陽光のように眩しい印象を残している。歌ったのは、多田武彦の無伴奏混声合唱組曲「海鳴りを聞く」。

その後は、ほぼ音楽とは関係もなく、数十年をすごしてきた。
合唱とくにアカペラへの愛着はどこかに残っていて、たまに思い出して聴くことはあったし、演奏会に声をかけてくれる人は多かった。とりわけドイツ留学中、聖歌隊の友人に誘われて行った大聖堂での演奏は思い出深い。正直、ほとんどの曲を知らないので演奏自体は覚えてないが、歴史ありげな大聖堂の響きは、どこも荘厳で格別に思えた。

自分でも歌いたい、と思うようになったきっかけは、いつのころからか好きになっていたKing’s Singersだった。
あんなふうに歌ってみたい。
でも、どんなふうにも歌ってみたことがない人間である。
まず、コンセプト的には「うたごえ喫茶」のような、ゆるい合唱サークルに入って歌ってみた。好きなときに行って好きなように歌う、毎回違う人がいる。
最初の一歩としては最高だった。もちろん、それでKing’s Singersにはなれない。

なので、次に「アカペラ」「少人数」なところを探して、入団したのが今の合唱団だ。
パートはテナー。
が、団の人数バランス的にやむなくテナーなので、基本的に戦力外(div.要員)だった。
技術的に厳しく指導される団なのに、初心者の私は何も言われることがないまま3年が過ぎたところで

これでは、私は永遠に役立たずのままではないか。
せめて、努力するべき方向性は知っておきたい。
自分の課題だけでも教えてほしい。

と、厳しい指揮者の先生(本業はテノールの声楽家)に聞いてみたら、

「声量。・・・でも、それを求めるのも無理だしね」

即答だった。

少し考えてみて、それは確かに、自力だけでは無理だと思った。一度は、きちんと発声を習うべきだろう。しかし、私にテナーを教えてくれるところを探すのは厄介だ。
・・・この指揮者の先生に習うのが一番に違いなかった。
正直、ちょっと意趣返しの気持ちもなくはなかった。最初から役に立たないと決めつけて、何も教えてくれないが、私だって鍛えれば今よりはマシなのだ、それを証明したい。

不穏な思惑を含みつつ、「自分のパートに必要な音域の、合唱の発声を学びたい」と申し入れたのが2021年末。
実際にレッスンを始めたのが、2022年1月だった。