vol.2

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


2回目のレッスンも、発声練習のみ。
この記事を書くために、この日の練習の録音を聞きなおしていると、いろいろひどすぎて居たたまれない。今の発声も半年後にはそう感じるだろうか。とくに低音の発声が全く野生のままで不安定だな。

高音は
「男性と同じように、Bくらいまで(地声で)引っ張れるようになればいい」
と言われているな。この時点ではAsが限界と認定されていた。

実にカオスな声だったので、ダメ出しのオンパレードだが、特に意識すべき基本として

「1音ごとにいい声を出そうとせず、全音域で音色を統一しろ」
「鳴らす、響かせることだけ考えろ」

そういう万人への注意事項とは別に、私はどのフレーズもおそるおそる歌いだしては、そのたびに
「出だしの積極性が足りない」
と怒られていた。5回目くらいに
私 「最初の音に自信がないのです」
先生「合唱じゃないんだから、間違ったらやり直せばいい。度胸が足りない」
これ以降は開き直って、同じことは言われなくなった。

練習の最後に
「あといくつかのパッセージを終えたら、練習曲をやるよ」
と当然のことを言われて、私は動揺した。発声のことしか考えてなかったのだった。

vol.1

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事はそれ以降に書いたものです)


受講を申し込んだとき、私は明確に、
「特に必要な音域での声量の改善のために、合唱での発声方法を学びたい」
と、実はあまり明確でない目的を、先生に伝えていた。

その時点で、私は自分を「男声」と規定してはいなかった。
合唱団に3年、テナーとして在籍して、私は自分の声がその音域をほとんどカバーしていないことを知っていたから、アルトの練習をしたほうがいいのではないか、それも相談しようと思っていた。「必要な音域」とは、それによって決まるのだ。

が、先生の方では
「テノールの低い音域が出せるようになりたい」
ものと思われたらしく、練習は最初から「テノール」前提で始まり、相談の機会は永遠に(?)失われたのだった。
まぁ、プロのテノールが許すんだから、いいんだろう。

先生によれば、女性テノールは近年「てのーら」と言う。「ガールテノール」より厚かましくはないが、相手に伝わらない確率が高そうだ。

最初に簡単なレクチャーで

・低音は生まれつきの才能であり、声帯の長さで下限が決まっている
・でも、いま50%くらいしか出せていないものを、訓練で70%とかに上げることはできるだろう
・地声の高音は、年齢と共に出せなくなる

それから、声域確認の発声練習(だと思う。このときと同じフレーズは、今後の練習で2度と使われることはなかった)
その後普通の発声練習で、45分はあっというまに終わった。
この日は、低音を中心に練習したので、低いC以下の音まで「粘れ」と言われた。
ただ、次のレッスンからは低音を後回しにすることになったため、そんな低音は、現在(=練習開始から7ヶ月後)に至るまで歌っていない。

vol.0

(このサイトは、2022年8月に作成したものなので、この記事は当然それ以降に書いたものです。)


私の人生は、音楽とはおよそ縁のないものだったと思う。

子供のころに楽器を習っていた、などということもなく
(児童合唱団を半年で辞めたことはあった、そういえば。ちなみに最初からアルト)

音楽系の部活動に所属していた、ということもなく
(本来の水泳部の休眠期に小学校を転校した結果、1学期だけ吹奏楽部に入れられたことはあった、そういえば。ちなみにトロンボーン、鳴らせないままだった)

もちろん高校での芸術科目は、音楽選択ではなかった。

上のカッコ書き部分を思い出してみると、音楽を嫌いになるきっかけの方が多かったな。

それでも後に合唱を始めることにつながったのは、高校の合唱祭で、これは必ずアカペラという伝統だった。
私のアカペラへのこだわりは、青春へのノスタルジーかもしれない。
とりわけ3年次の卒業記念有志合唱への参加が、夏の陽光のように眩しい印象を残している。歌ったのは、多田武彦の無伴奏混声合唱組曲「海鳴りを聞く」。

その後は、ほぼ音楽とは関係もなく、数十年をすごしてきた。
合唱とくにアカペラへの愛着はどこかに残っていて、たまに思い出して聴くことはあったし、演奏会に声をかけてくれる人は多かった。とりわけドイツ留学中、聖歌隊の友人に誘われて行った大聖堂での演奏は思い出深い。正直、ほとんどの曲を知らないので演奏自体は覚えてないが、歴史ありげな大聖堂の響きは、どこも荘厳で格別に思えた。

自分でも歌いたい、と思うようになったきっかけは、いつのころからか好きになっていたKing’s Singersだった。
あんなふうに歌ってみたい。
でも、どんなふうにも歌ってみたことがない人間である。
まず、コンセプト的には「うたごえ喫茶」のような、ゆるい合唱サークルに入って歌ってみた。好きなときに行って好きなように歌う、毎回違う人がいる。
最初の一歩としては最高だった。もちろん、それでKing’s Singersにはなれない。

なので、次に「アカペラ」「少人数」なところを探して、入団したのが今の合唱団だ。
パートはテナー。
が、団の人数バランス的にやむなくテナーなので、基本的に戦力外(div.要員)だった。
技術的に厳しく指導される団なのに、初心者の私は何も言われることがないまま3年が過ぎたところで

これでは、私は永遠に役立たずのままではないか。
せめて、努力するべき方向性は知っておきたい。
自分の課題だけでも教えてほしい。

と、厳しい指揮者の先生(本業はテノールの声楽家)に聞いてみたら、

「声量。・・・でも、それを求めるのも無理だしね」

即答だった。

少し考えてみて、それは確かに、自力だけでは無理だと思った。一度は、きちんと発声を習うべきだろう。しかし、私にテナーを教えてくれるところを探すのは厄介だ。
・・・この指揮者の先生に習うのが一番に違いなかった。
正直、ちょっと意趣返しの気持ちもなくはなかった。最初から役に立たないと決めつけて、何も教えてくれないが、私だって鍛えれば今よりはマシなのだ、それを証明したい。

不穏な思惑を含みつつ、「自分のパートに必要な音域の、合唱の発声を学びたい」と申し入れたのが2021年末。
実際にレッスンを始めたのが、2022年1月だった。