雪と毒杯

予約していた「死を呼ぶ婚礼」を受け取りに行ったついでに、同じ作者のミステリが開架にあったのを借りてきた。
これは、探偵がいるわけではなく、とりあえず一人称視点になる2人は犯人から除外して、推理をしていくことになる感じ。
私はあまりミステリをよく読むわけでもないので、素直に作者に導かれるまま、気持ちよく怪しんだり驚いたりした。

そういう謎解きの過程は面白かったけれど、犠牲になったリチャードは気の毒すぎる。
なんとか慰めを見出そうとするなら、それほどまでに魂を分けた故人とすぐに再会できたのは幸せだったかも・・・。
そのアントニアさんには、物語のあいだじゅう、

「あなたの当てつけのような遺言のせいで、リチャードが可哀想なことになったじゃないか」

と思ってたけど、そうじゃなかったのは良かった。
それ以前に、これが作り話で良かった。

こういう娯楽作品で人生を考えるのもどうかと思うが、周囲をさんざんに振り回しながらも、ちゃんと愛し愛されて人生を終われるってのは素敵なものなのだろう、と思う。私がこれから先のどの時点で死ぬにしても、わざわざ私の死に目に会いたがる人もいないに違いないし、私としても、そばにいて欲しい人は思い当たらない。「人に囲まれて死ぬ」という未来は、事故死など往来でなければ、私にはあるまい。わかりやすく誰かを助けて死ぬ、というのが最も幸福な死に方に見えるが、それはそれで、助けられる側の荷が重いしね。そんなことは起こらないにこしたことはない。

主要登場人物の中では、トレヴァーが最初から最後まで影が薄くて、こんなに薄いやつは犯人ではなかろう、と思ってしまったし、ヒステリックなオカンも全然怪しくなくて、もう少し疑わしい要素が欲しかったな。
あと、その場で「遺言状を見せろ」て言われたらどうするつもりだったのかな・・・

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